疲労破壊体験(1)

2020年極寒の大晦日、ロードバイクでヒルクライム中、足元から突然「ガシャン!」と大きな音と共に、前に進めなくなって、いわゆる「立ちゴケ」して側溝に転落。

登坂中で低速だったので、幸いにも怪我はありませんでしたが、「何だなんだ!」とバイクを見ると、ディレイラーがだらーん。ディレイラーハンガーと呼ばれる、フレームとの結合部品が折れてしまっていました。

一瞬途方に暮れましたが、幸いにも坂の麓に親戚宅があり、そこに駆け込んだことで凍死は免れました(汗)。

垂れ下がったディレイラー
折損部分(白い光沢部分)

さて、このディレイラーハンガーという部品。材質は、自転車のほかにトラック車体、船舶や航空機などにも一般的に使用されているA6061-T6(アルミニウム合金)でして、比較的高い耐食性を有するとともに、T6処理という熱処理により強度を向上させています。

折れたディレイラーハンガー
元の姿
(出展:DERAILLEUR HANGAR.com)

一方、ディレイラーハンガーの機能の一つである、フレームへの過負荷を防止する「ヒューズ」の役割として、一定の負荷が作用すると折れるようになっています。このハンガーの場合、肉厚が急変する段付き部コーナー部はR加工はなく、シャープな加工となっています。応力集中係数を高く取って、いざというときに折れやすい設計がなされていることがわかります。

このような設計の副作用として、どうしてもコーナー部で疲労き裂が発生しやすくなってしまします。今回の破断は、破面の状態から、約12,000kmのライドにより疲労き裂が徐々に進展し、登坂中にガッと踏み込んだ脚力により急速破断したものと推定されました。破面の状況については次回の投稿でお見せ致します。

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