前回の投稿で、疲労き裂は応力集中係数が大きいコーナー(段付き)部で発生しやすい点を述べました。
破面を見ると、比較的平坦な部分と、凹凸の大きい部分に明確に分かれています(写真が今一つで申し訳ありません)。
平坦な部分はコーナー部に近い側で破面全体の半分ほどを占めています。
凹凸の激しい延性破面に対して、疲労破面はこのように比較的平坦な外観を呈する特徴があります。
従いまして、コーナー部を起点に疲労き裂が発生し、徐々に進展していったものと推察されます。
そうなると、リガメント(亀裂が入っていない部分)減少により強度が低下します。
疲労き裂が一定の深さに達した時点で、最後は登坂時の急激な踏み込み力によって急速破断し、
その結果、残りの約半分の破面は凹凸の大きい延性破面を呈しているものと考えられます。


ディレイラーハンガーは、常にチェーンのテンションによって一定の曲げの力を受けています。
この一定の力では疲労を起こしませんが、Stop and Goや加速などに伴う負荷変動が疲労破壊の要因となり得ます。
さらに、走行時の振動も要因の一つでしょう。
疲労は見た目の変形をほとんど伴わないため、き裂は人知れず進展し、ある日突然破滅的な破壊に至る、恐ろしい現象です。
先日発生したボーイング787のエンジン破壊トラブルも、タービンブレードの疲労破壊が原因、という見立てがなされています。
過去には、JALジャンボ機墜落事故、エキスポランドジェットコースター事故、最近では新幹線のぞみ台車からの異音など、
疲労破壊は、しばしば社会を騒がせる事態になっています。
少し話が大きくなってしまいましたが、次回は、いかにディレイラーハンガーの疲労を防止し、
走行中に途方に暮れる事態を招かないようにするか? 考えてみたいと思います。