実際の腐食問題に対応するためには、「不動態」という状態について理解しておく必要があります。
例えば鉄を強い酸化剤である濃硝酸に浸すと、始めは激しく反応が起こるが急に停止します。これは、鉄の表面に緻密なFe2O3 とFe3O4 からなる皮膜が生成したためです。
この状態の鉄を腐食性のある水溶液に浸しても腐食は発生しなくなります。このような現象を不働態化と呼び、この皮膜を不働態皮膜と言います。
不働態が安定に維持されれば腐食は起こりませんが、何らかの理由で不働態皮膜が破壊されると、たちまち再び元の鉄の性質を示すようになります。
不働態化していない状態、つまり鉄表面に皮膜がなく、言わば裸の状態で水溶液に接している状態を「活性状態」または「活性態」と呼びます。
不働態皮膜を破壊する代表的な物質として塩化物イオンがよく知られています。塩化物イオンが存在すると、鉄は容易に活性状態に戻ってしまうのです。