今回は以前担当した局部腐食の原因調査と対策事例を紹介します。
1. 概要
炭素鋼製セパレータ底部を中心に、減肉速度数mm/yの虫食い状局部腐食が認められた。底部1Bノズル突合せ溶接部では貫通も認められた。
高S, 高Nの燃料油を低S, 低Nのものに変更したため、洗浄水側の化学環境が大きく変化したことによる炭酸腐食と結論付けた。対策として、洗浄水にアンモニア水を注入することで腐食環境改善を図った。
2. 設備と運転条件
■ 設備と機能
・炭素鋼製縦型圧力容器(1961年製作)
・石油燃料を部分酸化法(POX)により燃焼させ、COとH2を発生させるプロセスにおいて、燃焼ガスを水
に接触させることで炭素微粒子(スス)を分離回収する機能をもつ
■ 運転条件
運転温度:180℃
運転圧力:1.65 MPa
通水量:7t/h
3. 燃料変更前後の化学環境の変化
3.1 燃料変更前(高N・高S燃料)
● ガス側
POXにより NH₃が多量生成(燃料N由来)
SO₂/SO₃ も多い(燃料S由来)
● 水側
高圧下で NH₃ が水に吸収 → pH ≈ 9
Fe²⁺+SO₄²⁻ → 硫酸鉄スケールが厚く形成
pH高く、スケールもあり、腐食は抑制されていた
3.2 燃料変更後(低N・低S燃料)
● ガス側
燃料中のN分低下によりNH₃生成量が激減
SOₓも1/10に低下
CO₂は依然として存在(相対的に主役へ)
● 水側
NH₃供給減少 → アルカリ源がなくなる
新たな硫酸鉄スケールが生成されない
CO₂溶解 → 炭酸系で pH ≈ 6
既存スケールが剥離 → 素地鋼が露出
4. 腐食メカニズム
4.1 pH低下による炭素鋼の活性溶解
pH 9 → 6 で腐食速度は桁違いに上昇
炭酸系(CO₂)では FeCO₃皮膜が形成しにくい→ 全面腐食+局部腐食が進行しやすい
4.2 スケール剥離による局部電池形成
スケールが不均一に剥離することで、スケールがカソード、新たに露出した素地がアノード
→ アノード部が虫食い状局部腐食
4.3 ノズル突合せ溶接部での破孔
・不完全溶け込みによる施工
・溶接熱影響による組織変化
・溶接残留応力
→局部アノード化
5. 原因、まとめ
燃料変更後の局部腐食の主因は:
1.NH₃供給の減少 → pH 9 → 6 に低下
2.硫酸鉄スケールの新生停止+剥離 → 素地露出
3.スケール下の酸素欠乏 → 局部腐食環境の形成
4.ノズル溶接部の局部要因 → 貫通
燃料変更により、「高N・高S → 低N・低S」というガス化学の変化が、水側環境を「アルカリ性(pH9)
→ 炭酸系中性(pH6)」へ大きく変化させた。これにより、スケール剥離・局部環境悪化・溶接部弱点が
顕在化し、虫食い状局部腐食が発生した。
6. 再発防止策
6.1 水質管理
アンモニア水注入によりpHを 8〜9 に維持(設備更新までの暫定措置)
6.2 設備更新
本体及びノズル材質を炭素鋼からSUS316Lに変更し更新

